海から河へ:河川舟運活性化に向けた各種船舶の検討
当会では、平成17年度河川整備基金助成事業「河川・海域の総合的活用による河川舟運活性化に関する研究」(委員長:久保雅義神戸大学海事科学部長、参加会員4社)を実施した。
本研究は、阪神・淡路大震災時に海からの支援が有効だったことに着目し、さらにその効果について河川を通して内陸部へと展開できないかという視点に立ち始められた。当初は防災支援に特化して検討を行ったが、研究を重ねる中で、災害時に円滑な支援を行うためには平時からの運用が必要という認識を持った。まず、急がない荷物である静脈物流の可能性を検討し、今年度はさらに、教育・親水・レクリエーション、環境という新たな視点を取り込んだ検討を実施した。
検討にあたっては水深2mとした場合の遡上可能河川を選定し、その結果、利根川、荒川、江戸川、最上川、信濃川、木曾川、淀川について約10〜40kmの範囲で遡上が可能なことがわかった。今回は遡上可能河川の中から代表的なものとして、荒川、信濃川を選定し、それらの自然・社会状況を踏まえた上で、当該河川で展開が可能な、教育・親水・レクリエーション、環境という視点からの検討を行い、新たな航路の提案や海域では既に導入されている高炉スラグの河川域での展開可能性を示した。もちろん、荒川、信濃川以外の遡上可能河川においても、若干の条件の違いはあるものの、今回検討した視点を参考に、当該河川における展開について検討していただくことが可能と考えている。
特に船舶については、橋梁の下に充分な高さが確保できないといった条件でも航行が可能な「低エアードラフト船」等、厳しい条件の中でも活用できるものについて検討していることから、全国の遡上可能河川での展開が期待できる。また、今年度は平成10年度から実施してきた船舶に関する検討のまとめを行い、防災・救援や静脈物流に資する、河川用コンテナバージ、小型災害支援艇、浮体コンテナ等、10以上の船舶について概要を整理した。これらを踏まえて、低エアードラフト船、低エアードラフトの浮体コンテナ、環境改善船について新たな提案を行った。ここで提示した船舶を活用することにより、河川・海域での新たな河川舟運の展開可能性についても期待ができる。
今後も、河川・海洋を利用した防災支援を促進させるために、その課題である平時利用を促進するための各種方策について検討を重ねていきたいと考えている。関係方面の方々のさらなるご協力をお願いしたい。
※本報告書について若干の余部がありますので、入手希望の方は事務局までお問合せ下さい。
これまでに概念設計をした船舶の概要
(1)物資輸送用船舶
種類 |
河川用コンテナバージ |
イメージ図 |
全長 |
37.0m |
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幅 |
9.0m |
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喫水 |
1.7m |
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最大AD |
3.0m〔バラスト注水時〕 |
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貨物 |
220t、20ft×4 40ft×2 |
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押航速度 |
約8ノット |
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材質その他 |
鋼製、荷役はRORO方式 |
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プッシャー 総トン数 長さ×幅 主機馬力 |
19t 13.0mx6.0m 550PSx2基 |
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特徴 |
RORO方式のコンテナシャーシ輸送用押航式バージ、水面上高さが低いので比較的河川上流まで遡上可能、通常は河川〜湾内のコンテナバージとして運航、非常時は建設用重機、トラック、救援用コンテナ医療品などを輸送可能、RORO方式のため、荷役岸壁は必要だが、クレーンなどの荷役設備が不要で非常時には最適。 |
(2)人員輸送用船舶
種類 |
河川用旅客船 |
イメージ図 |
全長 |
40.0m |
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幅 |
9.0m |
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喫水 |
1.4m |
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最大AD |
3.0m |
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積載量 |
旅客45t 旅客椅子席200名 旅客立席 300名 |
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航海速度 |
12ノット |
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主機馬力 |
500ps×2 |
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材質 |
鋼製 |
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特徴 |
水面上高さが低いので河川上流まで遡上可能、通常は河川用旅客船として運航、非常時は緊急人員や医療品などを輸送可能。 |
(3)多目的ワークボート
種類 |
双胴型多目的作業艇 |
イメージ図 |
全長 |
15.7m |
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幅 |
6.5m |
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喫水 |
1.0m |
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最大AD |
3.0m(マスト起倒式) |
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貨物 |
各種機能コンテナ 積み替え可能 |
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航海速度 |
10ノット |
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主機馬力 |
260ps×2 |
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材質 |
鋼製 |
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特徴 |
機能コンテナは、人員輸送、ゴミ回収、油回収、消防ポンプ、観測装置、救急装置と標準サイズコンテナを目的に応じて積み替えることにより、多目的に使用可能な作業艇である。通常はゴミ回収などとして運航、非常時は消防装置、油回収、緊急人員や医療品輸送などに転用可能。 |
(4)災害支援小型艇
種類 |
小型災害支援艇 |
イメージ図 |
全長 |
13.0m |
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幅 |
3.2m |
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喫水 |
0.5m |
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最大AD |
1.8m |
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機能 |
船首ランプ ポンプ4t/min×180m 小型消防車1台搭載 |
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航海速度 |
12ノット |
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主機馬力 |
340ps×1 |
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材質その他 |
アルミ製、推進器は浅海用のポンプジェット採用 |
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特徴 |
トレーラで陸上輸送可能な小型サイズとし、海・河川より消防活動への送水支援並びに物資・消防機材・人員等の輸送を支援する災害支援小型艇、緊急時には陸上輸送や、海上・河川を自航が可能。 |
(5)小型特殊艇
種類 |
小型支援艇 |
イメージ図 |
全長 |
14.9m |
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幅 |
6.5m |
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喫水 |
1.0m |
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最大AD |
3m |
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機能 |
船首付け可能とし、機能コンテナ搭載可能 |
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航海速度 |
10ノット |
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主機馬力 |
250ps×2 |
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材質その他 |
鋼製 |
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特徴 |
船首付け可能な小型多目的支援艇、機能コンテナは、人員輸送、ゴミ回収、油回収、消防ポンプ、観測装置、救急装置と標準サイズコンテナを目的に応じて積み替えることにより、多目的に使用可能な作業艇である。通常はゴミ回収等として運航、非常時は消防装置、油回収、緊急人員や医療品輸送などに転用可能。 |
(6)災害支援艇(大型)
種類 |
災害支援艇(大型) |
イメージ図 |
全長 |
19.5m |
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幅 |
5.8m |
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喫水 |
0.6m |
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最大AD |
通常3.0m |
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機能 |
船首ランプウエー ポンプ4t/min×180mコンテナ、消防車 |
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航海速度 |
9ノット |
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主機馬力 |
340ps×1 |
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材質その他 |
軽合金、推進器は浅海用ポンプジェット採用 |
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特徴 |
海・河川より消防活動への送水支援並びに物資・消防機材・人員等の輸送を支援する災害支援艇。船首ランプウエーによりRORO方式荷役可能。 |
(7)廃棄物運搬バージ
種類 |
河川用コンテナバージ |
イメージ図 |
全長 |
37.0m |
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幅 |
9.0m |
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喫水 |
約1.5m |
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最大AD |
約4.0m |
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貨物積載量 |
約220t、20’コンテナ×15 |
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材質、荷役 |
鋼製、荷役はクレーン使用 |
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押航速度 |
約8ノット |
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プッシャー 総トン数 長さ×幅 主機馬力 |
19t 13.0m×5.0m 550PSx2基 |
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特徴 |
コンテナ輸送用甲板積押航式バージ、水面上高さが低いので比較的河川上流まで遡上可能、通常は河川〜湾内のコンテナバージとして運航、非常時は建設用重機、トラック、救援用コンテナ医療品などを輸送可能、LIFTON方式のため、クレーンなどの荷役装置が必要だが、非常時には有効、水面上高さが比較的低いので河川上流まで遡上可能。 |
(8)廃棄物運搬船
種類 |
河川用RORO静脈物流輸送船 |
イメージ図 |
全長 |
43.0m |
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幅 |
10.6m |
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喫水 |
1.2m |
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最大AD |
3.5m |
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貨物 |
100t、5t集塵車12台 |
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航海速度 |
7ノット |
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主機馬力 |
300ps×2基 |
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材質その他 |
鋼製、荷役はRORO方式 船橋上下式 |
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特徴 |
RORO方式の集塵車やトラックを搭載可能な輸送船、水面上高さが低いので比較的河川上流まで遡上可能、通常は河川〜湾内の廃棄物輸送船として運航、非常時は建設用重機、トラック、救援用コンテナ医療品などを輸送可能。 |
(9)浮体コンテナ
種類 |
浮体コンテナ |
イメージ図 |
全長 |
6.058m |
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全幅 |
2.438m |
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全高 |
2.4m |
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最大喫水 |
1.151m |
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最大AD |
1.93m |
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貨物 |
10t |
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最大重量 |
17t |
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材質その他 |
鋼製又はアルミ製、外部はFRPコーティングし水密保持。吊上用ポシショニングコーン有 |
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特徴 |
海上輸送用国際コンテナ20’型を浮上可能としたコンテナ、底部にコンクリートを張り重心を下降、天井部にはハッチを設置した。トラック輸送から河川、湾に浮べまとめて押航し海上輸送も可能、エアードラフトも小さく河川上流まで遡上可能とした新しい輸送システム。廃棄物の静脈輸送から非常時の救援輸送、保管まで適用範囲が広い。 |
(10)浮体コンテナプッシャー(押船)
種類 |
浮体コンテナプッシャー |
イメージ図 |
全長 |
6.058m |
|
幅 |
2.438m |
|
全高 |
2.4m |
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喫水 |
1.0m |
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最大AD |
1.9m |
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押航速度 |
約3〜4ノット |
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主機馬力 |
360ps×1 |
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材質その他 |
鋼製、上部構造はアルミ 押航用フェンダータワー 船橋上下式 |
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特徴 |
浮体コンテナを1〜4個まとめて押航する小型押船、上流の貨物集積所から中流集積場のセミサブバージキャリヤーまで押航する。サイズが浮体コンテナと同じなので、セミサブバージキャリヤーにも搭載可能。 |
(11)セミサブバージキャリヤー及びプッシャー
種類 |
セミサブバージキャリヤー |
イメージ図 |
全長 |
38.0m |
浮体コンテナを浮上のまま搭載中 浮体コンテナを満載し、排水後航行中 |
幅 |
9.8m |
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喫水 |
1.53m |
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最大AD |
1.92m |
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貨物積載量 |
218t、浮体コンテナ 8’×8’×20’×15 |
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押航速度 |
約6〜7ノット |
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材質 |
鋼製 |
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荷役方式 |
注排水し浮体コンテナを浮上のまま搭載 バラストポンプ×1 後部扉×1 |
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押舟 総トン数 長さ 型幅 主機馬力 |
19t 13.0m 6.0m 600−800ps x 2基 |
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特徴 |
ドック型のセミサブバージキャリヤーで、船倉に注水により沈下させ、浮体コンテナを浮かべたまま押航で搭載、後部扉を閉じて排水し、コンテナをホールドに定置させプッシャーにて押航する。 浮体コンテナを浮いたまま搭載できるので、クレーンなどの荷役装置が不要。 クレーンがある場合は、注水しないで通常の船舶の様にコンテナを搭載可能。 |
(12) 浮体コンテナ輸送システム概要
1.上流集積場 トラックで上流集積場に集められた浮体コンテナは川岸より、クレーンで水面に降ろされる。 これらの浮いたコンテナは2〜4ヶに纏められて小型プッシャー押航され、中流集積場に運ばれる。 |
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2.中流集積場 上流より浮体コンテナが小型プッシャー押航されて中流集積場に到着。 中流集積場ではサブマーシブルバージが船倉に注水し、船尾ドアを開けて待機。 |
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2-1中流集積場積込 浮体コンテナは浮いたまま、小型プッシャーにより、サブマーシブルバージ船倉内に浮いたままで積み込む。浮体コンテナ積載完了したら船倉内の水を排水して浮上。岸壁上の浮体コンテナや通常コンテナは排水後の船倉内に積み込まれる。 |
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3.サブマーシブルバージを押航 コンテナを積載したサブマーシブルバージは19t型プッシャーにより河口のリサイクルポートやメガポートまで押航される。 |
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4.リサイクルポートまたはメガポートに到着 到着したバージからコンテナはクレーンにより荷揚げされる。荷上げ完了後バージに空コンテナ積み込み再び中流集積場まで運ばれる。 |
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